倫理学

【読書ノート】『制度とは何か』7章から8章

制度とは何か──社会科学のための制度論作者:フランチェスコ・グァラ,Francesco Guala慶應義塾大学出版会Amazon 第7章 読心 コーディネーションが成功するためには、全員が同じ行動ルールに従うだけでは不十分だ。というのは、ほかの人たちもその行動ルールに…

【読書ノート】『制度とは何か』5章から6章

制度とは何か──社会科学のための制度論作者:フランチェスコ・グァラ,Francesco Guala慶應義塾大学出版会Amazon 第5章 構成 サールは、制度を次のように定義している。 制度は、「XはCにおいて、Yとみなされる」という形式の構成的ルールの体系である。 たと…

【読書ノート】『制度とは何か』1~4章

制度とは何か──社会科学のための制度論作者:フランチェスコ・グァラ,Francesco Guala慶應義塾大学出版会Amazon 「制度」というのは一見、地味なテーマだ。 「制度って、ようするに法律とかルールとかの話なんじゃないの?」。そういう風に受け取る人はたぶん…

【読書ノート】『地球と存在の哲学』第2章

地球と存在の哲学―環境倫理を越えて (ちくま新書)作者:オギュスタン ベルク筑摩書房Amazon 第2章 母型の郷愁 1 近代性の拒否 西洋にとっては、近代というのは時間的な現象だ。つまり、それまでは前近代だったけど、ある時点から近代に移行したのだ、という…

【読書ノート】『地球と存在の哲学』序論、第1章

地球と存在の哲学―環境倫理を越えて (ちくま新書)作者:オギュスタン ベルク筑摩書房Amazon ベルクはもう読まない! というつもりでいたけれど、やっぱりもうちょっと読まないとなあという気持ちになった。 風土論によって気候変動みたいな環境問題が解決され…

【読書ノート】『グリーン経済学』22章~ラスト

グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon 22 グリーンプラネット 気候変動みたいなグローバルな外部性の解決に取り組むには、主要国の協調行動が不可欠だ。だ…

【読書ノート】『グリーン経済学』19章~21章

グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon 19 グリーン世界における個人の倫理 アダム・スミスのいう「見えざる手」がうまく働いていれば、私たち一般市民は倫…

【読書ノート】『風土学はなぜ何のために』5章~ラスト

風土学はなぜ 何のために作者:オギュスタン・ベルク関西大学出版部Amazon 第五章 風土学の二つの時代 やがて私(ベルク)は地理学から存在論の方に興味が移っていった。和辻が言うように、風土とは「人間存在の構造契機」なのであり、風土について論じていく…

【読書ノート】『風土学はなぜ何のために』4章

風土学はなぜ 何のために作者:オギュスタン・ベルク関西大学出版部Amazon 第四章 通態化 デカルトは、「我思う、ゆえに我あり」と言ったとか言わなかったとか。いや、言ったのだ。言わなかったにしても、『方法序説』には確かにそう書いてある。 我思う、ゆ…

【読書ノート】『風土学はなぜ何のために』3章

風土学はなぜ 何のために作者:オギュスタン・ベルク関西大学出版部Amazon 第3章 風土性 わたし(ベルク)は昔、和辻哲郎の『風土』という本が何を言わんとしているのか、よくわからなかった。とくにわからなかったのは次のようなくだりだ。 この書のめざすと…

【研究ノート】風土論の使い道

前回もちょろっと風土論の使い道について書いてみたけれど、もうちょいと考えてみたい。 使い道1:地域づくり 地域づくり系の文献を読んでいると、地域づくりをするにはまず地域のことを知ることだ、と言う話がよく出てくる。それで、住民たちで町歩きをした…

【用語集】風土論

風土論というのがあって、学生時代から勉強してきているのだけど、いまだにうまく理解できている感じがしない。数千字でまとめられるものではないけれど、なんとかエッセンスだけでもまとめてみよう。 ザックリ言うと、風土論とは人間と環境の関係性を現象学…

【研究ノート】仏教的自然観にもとづく環境心理学の構想

環境意識に関する調査をすることになって、具体的に何しようかあれこれ考えているのだけど、うまくまとまらない。最終的には、新しい環境教育のあり方を提案するというところまでつなげる予定で、その準備作業としての調査という位置づけだ。 それで環境心理…

【用語集】機能とケイパビリティ

「不便益」という考え方がある。「不・便益」ではなく、「不便・益」。つまり、不便であることは、悪いことばかりではなく逆に良い面もあるのではないかということだ。 ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れて…

【用語集】先験主義と実現ベースの比較

「気候変動問題を解決するには資本主義を捨てなければならない」と主張する本が何十万部も売れている。もちろん他の経済学者からは厳しい批判が出た。しかし、そうした批判の声はあまりに地味なせいか、人々の耳にはほとんど届いていないみたいだ(以下の柿…

【用語集】社会契約説

社会契約説とは? 正義は、誰もが納得できるものでなければならない。たとえばプーチンは自分の正義を信じてウクライナに攻め込んだのだろうけれど、その正義は多くの人々にとって理解不能なものだ。あるいはジャイアンは「お前の物は俺の物、俺の物は俺の物…

【用語集】義務論

義務論では、義務に従うことが倫理的に善いことだとされている。そんなの当たり前だと思うだろうか? まあ、そうだ。でも、一見当たり前なこの主張を裏付けるカントの推論は割とアクロバティックでそれなりに興味深いものなので、もう少し詳しく見てみる価値…

【用語集】功利主義

津波てんでんこと功利主義 「津波てんでんこ」という言葉がある。津波が来たら、周りの人を助けようとせずに、自分だけで逃げろという意味だ。 過去に津波に襲われた経験のある地域では、おそらく、家族や友人を助けようとして自分も津波に飲まれてしまった…

【読書ノート】Morality Competition and the Firm 第5章

Morality, Competition, and the Firm: The Market Failures Approach to Business Ethics (English Edition)作者:Heath, JosephOxford University PressAmazon 第5章 Buisiness Ethics and the "End of History" in Corporate Law なぜ株主は優先されるべき…

【読書ノート】Philosophical Foundations of Climate Change Policy第6章

Philosophical Foundations of Climate Change Policy (English Edition)作者:Heath, JosephOxford University PressAmazon 第6章 Positive Social Time Preference(正の社会的時間選好) イントロ 気候変動の問題を考えるときに、「将来世代の厚生水準を高…

【雑文】リスニングできたら時短になるのになあ

何かとやることがあって本を読む暇がない。本を読んでても、「こんなことやってる場合なんだろうかもっと役に立つことしないと時間がもったいないよ時間が」という前のめりな思考モードになっていて句読点も付け忘れ結局何も手に着かない感じだ。 世のビジネ…

【読書ノート】Philosophical Foundations of Climate Change Policy第5章

Philosophical Foundations of Climate Change Policy (English Edition)作者:Heath, JosephOxford University PressAmazon 第5章_The Social Cost of Carbon(炭素の社会的コスト) イントロ 炭素税をかけるのは、費用便益分析をするのと同じ事なのだろうか…

【読書ノート】 Philosophical Foundations of Climate Change Policy第3章

Philosophical Foundations of Climate Change Policy (English Edition)作者:Heath, JosephOxford University PressAmazon 第3章 Intergenerational Justice(世代間倫理) イントロ 本章と次章における私の目的は、気候変動問題に対する帰結主義的アプロー…

【読書ノート】 Philosophical Foundations of Climate Change Policy第2章

Philosophical Foundations of Climate Change Policy (English Edition)作者:Heath, JosephOxford University PressAmazon 第2章 Climate Change and Growth(気候変動と成長) イントロ 哲学者たちは、気候変動を「世代間正義」の問題と分類しがちだ。そし…

【読書ノート】Philosophical Foundations of Climate Change 第1章

第1章 False Starts (間違った出発点) Philosophical Foundations of Climate Change Policy (English Edition)作者:Heath, JosephOxford University PressAmazon イントロ 「山のように考えよ」というレオポルドの言葉は有名だ。しかし、そうした環境哲学…

【読書ノート】『アダム・スミス 共感の哲学』

アダム・スミス 共感の経済学作者:ジェシー・ノーマン,JESSE NORMAN早川書房Amazon ちょいと時間に余裕が出てきたので、まとめないまま放置していた本をまとめてみよう。 本書は数ヶ月前に特急列車のなかで読んで、とても面白かった記憶がある。しかし例によ…

【読書ノート】Philosophical Foundations of Climate Change イントロ

Philosophical Foundations of Climate Change Policy (English Edition)作者:Heath, JosephOxford University PressAmazon ヒースの代表的な著作はだいたい読んで、なんでこの人がこういう考え方をするようになったのだろうか、というのはなんとなくわかっ…

【読書ノート】『ルールに従う』第9章(実質ラスト)

ルールに従う―社会科学の規範理論序説 (叢書《制度を考える》)作者:ジョセフ・ヒースNTT出版Amazon 10章「結論」がまだ残ってるけど、特に新しい話題が出てくるわけではないので、この9章でラストということにしたいと思う。 第9章 規範倫理学 イントロ 道徳…

【雑文】格差の善悪を決めるのは難しい。

21世紀の資本作者:トマ・ピケティみすず書房Amazon ずっと積ん読になっていたピケティの『21世紀の資本』を昨年末から読み始めて、数日前にやっと読み終わった。ああ長かった。あと、縦書き読みにくい。数字がたくさん出てくる本は基本、横書きにしてほしい…

【雑文】多数決は案外わるくないかもしれない

センの『集合的選択と社会的厚生』の勉強がちょっと滞っている。野暮用ができてしまったというのもあるけど、7章がちょっと難しくて詰まってる(論理展開が難しいというより、新しく出てくる概念が現実世界でどういう意味を持ってるのか飲み込むのに手間取っ…