【読書ノート】『正義のアイデア』第6章

第6章 閉鎖的不偏性と開放的不偏性

イントロ(p193-)

  • アダム・スミスは「公平な観察者」という考え方をする。これが、本章で扱う「開放的不偏性」のベースになる考え方だ。
  • 公平な観察者というのは、「他人から見たらこの問題はどんな風に見えてくるかな?」という思考実験のことだ。
  • たとえば、あなたがマリー・なんとかネットみたいな人だったら、貧乏人たちがパンが無くて苦しんでいるときに「あらあら、パンが無ければお菓子を食べればいいのに。おバカさんたちねえ」とほざくかもしれない。でも、あなたが公平な観察者になって、貧乏人の目から問題を見てみたら、「あ、パンが無いような状況だと、お菓子も無いに決まってるわよね」とすぐ気づくだろう。そうすれば、ギロチンにかけられることもなかったろうに1

原初状態と契約論の限界(p196-)

  • ロールズは正義の二原理を考えるときに、「無知のヴェールの下での原初状態」という思考実験をした。それが何なのかは、まあ、前に書いた気がするからここでは書かないよ。知りたかったらWikipediaでも読んでくれ。
  • ロールズの原初状態で正義に関する議論に参加するのは、「その社会で生まれ、そこで生きていくことになる」人々だ。ということは、その社会の外の人たちは無視されてしまっているわけだね。

国内の市民と国外の他者(p199-)

  • だけど、こんな風に社会の外の人々を正義の議論から閉め出してしまうことには問題がある。問題を下に列挙するよ。ちなみに、ここでは「社会=国」と考えている。

1.正義の問題は国内だけに限定されるわけではない。たとえば女性の権利の問題は日本でもアメリカでも問題だ。
2. 国内での行動が他国に影響を及ぼすことがある。温暖化とか。
3. 国外の人の声を取り入れることによって、国内の偏見を是正することができる。

スミスとロールズ(p202-)

(スミスとロールズはちがうのだよ、みたいな話がだらだらつづく)

ロールズのスミス解釈(p209-)

  • ロールズはスミスの議論を功利主義だと考えていたけれど、それは大間違いだ。だって、スミスは功利主義に大反対してたのだから。
  • スミスの公平な観察者というのは、功利主義ではないし、ロールズみたいな契約論でもない。正義について考えるための第3のアプローチなのですよ。

「原初状態」の限界(p212-)

  • さて、ここで「原初状態」というロールズの考え方の問題をまとめてみよう。

排他的無視:正義は国外の人にだって影響を与えるのに、彼らを議論の場から閉め出してしまう。
包摂的矛盾:どんな風な正義を構想するかによって、その国の構成メンバーはぜんぜん変わってくるはずだ。たとえば、100人の人が集まって、原初状態において正義を考えるとする。そして、「脱成長が正義!」という結論に達したとする。すると、脱成長だと100人も養うことはできなくて、30人くらいしか生きていけないとする。すると、100人で正義を考えたのに、そのうち70人の人たちはそういう正義が現実化した社会において生きられないのだ。これは矛盾だ。
手続き的偏狭主義:議論の場に加わるメンバーを制限しているので偏見が温存されてしまう可能性がある。

  • 以下、これらについて詳しくみてみる。

排他的無視とグローバルな正義(p215-)

  • 正義をある国や社会の中だけで完結させるのはへんだ。
  • 「女性である」「人間である」といったアイデンティティに突き動かされる人々が、国境を越えて、女性の立場を向上させるために尽力したり、人権保護活動に貢献するということはあるじゃないか。

包摂的矛盾と対象グループの可塑性(p232-)

(省略。さっき列挙したところで自分なりの解説を書いたので)

閉鎖的不偏性と偏狭主義(p227-)

(これも省略。とくに新しい話題が議論されてるとは思えない)

コメント

これでやっと第Ⅰ部が終わり。でもまだ半分以上残ってるよ…。平日にちまちま読んで、休みの日に一気にブログにまとめる、というのでこなしてるけど、あと1ヶ月以上かかりそうだなあ。

とにかく、同じような話がえんえんと繰り返されるのでつらい。しかも、「包摂的矛盾」みたいなマニアックな話にページ数を割いていたりするのでうんざりする。

包摂的矛盾って、何が問題なのかよくわからなかった。いや、論理上は問題だというのはわかりますよ。でも、そもそも原初状態で正義を考えるというのはあくまでロールズが『正義論』という本の中でひとりでやった思考実験なのだと思うけれど。別に本当に100人くらいの人を集めて「今日はみなさんに正義について考えてもらいます」なんてことをやるわけではない。なんか話がズレてる気がするんだけど。

10年くらい前に読んだときは良い本だと思ってたけど、改めて読み直すとかなりかったるい本だなあ、とイライラしている。主張自体は素晴らしいと思う。でも、もうちょっとコンパクトにまとめれば良かったのにとも思う。


  1. 改めて調べてみると、これはアントワネットの言葉ではないそうです。まあ、「なんとかネット」って書いといたからいいや。