私はこのブログの中で環境倫理学の悪口を何度か書いてきた。別に個人的に関係者に恨みがあるとかではなくて、単純に、勉強しても面白くないと感じるからだ。関連する本を読んでみても、あまり知的好奇心が刺激されない。「あんな問題もある」「こんな問題も…
初心者のためのロジスティック回帰分析入門作者:Kleinbaum,David G.,Klein,Mitchel丸善出版Amazon 統計分析の手法は教科書で一度勉強したらそれでOK、もう二度と勉強しないでいい、ということはなくて、しばらくしたらまた忘れてしまう。だから、再び同じ手…
感情は道徳問題を悪化させるという議論 心理学や脳科学の観点から道徳について論じる議論の中には、感情は道徳問題を悪化させるものであるという主張が割と見られる。 なぜ感情が道徳問題を悪化させるのか? それは、感情は非合理なものであり、理性的な議論…
正義のアイデア作者:アマルティア セン明石書店Amazon ずっと前に途中まで読書ノートをつくっていたけど、同じような議論が延々とつづくので疲れてストップしてた。最終章である第18章は全体のまとめになってるので、ズルしてここだけ要約して、読書ノートを…
環境意識関連の論文の準備を進めている中で、感情と道徳の関係について関心が出てきた。 環境配慮行動系の論文を探すと、感情が行動に影響するとか、道徳意識が行動に影響するといった趣旨のものはそこそこ見つかる。でも、そういう研究はだいたい社会心理学…
4月に某田舎大学の教員に着任して、毎週講義スライドを何十枚も作っている。いろんな雑用もある中でやっているのだけど、大体毎日6時前には帰れている。 ずっと前に初めて教員になった時は、講義準備で毎日夜遅くまで残っていたと思う。しかも雑用はそんなに…
知識を共有している、というのはどういう状況だろう? たとえば、AさんとBさんの2人がいる。そして、2人とも「太陽は東から昇り西に沈む」ということを知っているとする。こういう状況を「AさんとBさんは知識を共有している」といっていいだろうか? しかし…
制度とは何か──社会科学のための制度論作者:フランチェスコ・グァラ,Francesco Guala慶應義塾大学出版会Amazon 第9章 再帰性 自然科学と社会科学のちがいは、再帰性の問題に取り組んでいるかどうかだ、という考え方がある。 再帰性とは、たとえば予言の自己…
制度とは何か──社会科学のための制度論作者:フランチェスコ・グァラ,Francesco Guala慶應義塾大学出版会Amazon 第7章 読心 コーディネーションが成功するためには、全員が同じ行動ルールに従うだけでは不十分だ。というのは、ほかの人たちもその行動ルールに…
制度とは何か──社会科学のための制度論作者:フランチェスコ・グァラ,Francesco Guala慶應義塾大学出版会Amazon 第5章 構成 サールは、制度を次のように定義している。 制度は、「XはCにおいて、Yとみなされる」という形式の構成的ルールの体系である。 たと…
制度とは何か──社会科学のための制度論作者:フランチェスコ・グァラ,Francesco Guala慶應義塾大学出版会Amazon 「制度」というのは一見、地味なテーマだ。 「制度って、ようするに法律とかルールとかの話なんじゃないの?」。そういう風に受け取る人はたぶん…
どうしてアウトラインプロセッシングを活用できてない? シェイクせよ → シェイクできません だらだら式アウトラインプロセッシング おわりに 文章を書き出すのはおっくうなものだ。何を書きたいのかは書き出すまでわからないし、その一方で、書くのに必要な…
ゲーム理論は役に立たないかも? ゲーム理論の研究者たちの言い分 モデル化するとなんかいいことあるの? モデル化すると論理的に考えられるようになる モデル化すると他人の「断言」に惑わされなくなる まとめ あとがき ゲーム理論は役に立たないかも? 大…
ここのところなんとなく調子が悪かったのだけど、アパートの階段を登って吐き気がしたところで悪い予感がした。熱はグングン上がり、平熱36度の人間が39度。風邪か? コロナか? 原因がわかっても、なんの慰めにもならねえ。とにかく私はぶっ倒れている。ス…
問い:長期にわたって持続的で自律的な共的資源管理を可能にする社会規範は、どうして維持されてきたのか? 入会地とか里山とか、なんだか素晴らしいもののように語る人たちのことがちょっと苦手だ。「協働」とか「絆」って言葉も、目の前に突きつけられると…
シラバスを書かないとならない。ネタになりそうな文献を1冊1冊真面目に読んでいったら時間が足りなくなるので、まずはバッと網を張って、使えそうなネタがどこにあるのかを特定したい。掬読や問読も使えるけれど、一番役に立ちそうなのは目次マトリクスだ。 …
イントロ もともとこのブログを始めたきっかけは『独学大全』に書いてあった「会読」という独学法を実践するためだった。 会読は、同じように本を読む人たちとともに行う共同行為である。これだけでも我々は、いくらか挫折や断念から遠ざけられる。(……)で…
イントロ コモンズのガバナンス―人びとの協働と制度の進化―作者:エリノア・オストロム晃洋書房Amazon 授業準備でいろいろと本を読まないとならない。私は遅読なので、なんでもかんでも読んでるわけにいかないから、読むべき本を効率的に絞り込んでいくしかな…
私がやりたいことは突き詰めれば勉強ノートをまとめることなのだから、別にブログに書かなくてもいいよなあ、と思ってしばらくブログを休止していた。その後少しのあいだだけScrapboxを使っていて、そのあと深い理由もなくNotionに移行した。 ただ、Notionに…
私がブログを書くのは、別に人とコミュニケーションしたいからでもないし、人々を啓蒙しようというのでもないし、承認欲求を満たしたいからというのでもない。ただ、読書ノートに使っているだけだ。 読書ノートが欲しいのならコクヨがお勧めですよ、と言うこ…
地球と存在の哲学―環境倫理を越えて (ちくま新書)作者:オギュスタン ベルク筑摩書房Amazon 第2章 母型の郷愁 1 近代性の拒否 西洋にとっては、近代というのは時間的な現象だ。つまり、それまでは前近代だったけど、ある時点から近代に移行したのだ、という…
地球と存在の哲学―環境倫理を越えて (ちくま新書)作者:オギュスタン ベルク筑摩書房Amazon ベルクはもう読まない! というつもりでいたけれど、やっぱりもうちょっと読まないとなあという気持ちになった。 風土論によって気候変動みたいな環境問題が解決され…
グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon 22 グリーンプラネット 気候変動みたいなグローバルな外部性の解決に取り組むには、主要国の協調行動が不可欠だ。だ…
グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon 19 グリーン世界における個人の倫理 アダム・スミスのいう「見えざる手」がうまく働いていれば、私たち一般市民は倫…
グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon 14章 グリーン政治の実践 経済発展は環境に影響を与えるようだ。クズネッツ曲線というのがある。これは、経済発展の…
グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon 10章 エクソ文明の魅力 地球の環境がメチャクチャになっても、よその惑星に移住すればいいじゃないか、と考える人は…
グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon 8 グリーン経済学と持続可能性の概念 主流派経済学(新古典派経済学)による環境問題への考え方はこういうものだ。ま…
グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon ノードハウスの本は『気候カジノ』につづいて2冊目。 評判がいいので読み始めてみて、今のところ18章まで読み終わっ…
環境配慮行動関連の論文はどれも似たり寄ったりでつまんない、と思ってたからあまり読んでなかったけれど、改めて調べてみるとこの10年くらいで新しい展開を見せているみたいだ。最近勉強し直している風土論とも絡んできそうな気もするので、面白かった論文…
風土学はなぜ 何のために作者:オギュスタン・ベルク関西大学出版部Amazon 第五章 風土学の二つの時代 やがて私(ベルク)は地理学から存在論の方に興味が移っていった。和辻が言うように、風土とは「人間存在の構造契機」なのであり、風土について論じていく…