【読書ノート】『ヘーゲルの実践哲学』三章

いかんいかん、まとめるのがめんどくさくてずっと放置してた。そろそろやんないと。

実は、毎日コツコツ読んではいて、今は8章の途中まで行っている。1日10ページずつ読んでるから、あと1週間くらいで読み終わるのかな?

ただ、この本、というか哲学の本はどれもそんなもんだと思うけど、同じような話が延々と繰り返されて、どこらへんで議論が先に進んでるのかよくわかんない。第8章になっても冒頭の方の議論から何も進んでないようにさえ思ってしまう。やっぱりこうしてメモ取りながらじゃないと、哲学の本って読めないんだと思う。

第三章 自分自身に法則を与えることについて

Ⅰ 「自己立法」原理――カントからヘーゲルへ(p109-)

前章でも、精神(=制度)というのは人々が自分たちでつくるものなのだよ、ということが出てきたけど、これは実はカントの「自己立法」という考え方に遡るものだ。

自己立法というのは不思議な考え方だ。だって、自分たちで決めたルールで自分たちが縛られるわけだから。自由なんだか不自由なんだかわからない。だけど、それは不思議ではあっても神秘的なものではない。そこのところを本章では考えていきたい。

カントの場合、個人がひとりでじっくり考えることで、人が「何をするべきか」とか「何をするべきでないか」というのがわかってくるはずだ、と考える。つまり、自己立法は個人ベースでやるわけだ。

それに対しヘーゲルは、そんなのはフィクションだとカントをディスる。というのは、そもそも人々がそういう風に「何をするべきか」「何をするべきでないか」を考えるとき、すでにその社会にある生活様式とか人々の結びつきとか制度とかをベースにしているのだ。つまり、自己立法は個人ベースではなく、社会における相互承認ベースでやるものなのだ。

Ⅱ カントの「自己立法」の逆説性(p116-)

改めて言うけど、カントの「自己立法」という考えはへんだ。

たとえば「人を殺してはいけない」ということをAさんが自己立法するとしよう。問題は、どうしてAさんはそのルールに従わなければならないのか、ということだ。「自己立法でつくったルールには従わなければならないから」というのは理由にならない。だって、それを認めてしまったら、「じゃあ、『自己立法でつくったルールには従わなければならない』というルールにはどうして従わなければならないんですか?」という反論ができてしまうからだ。

まあ、カントのやりたいこともわからないわけじゃない。だって、「自己立法」という考えが成り立たないとしたら、人はたとえば神様とか偉い人とかのつくったルールに縛られて生きなければならないわけだから。そうだとすると、人は犬畜生と同じであり、自由なんて何にもないことになる。だから、彼としては人間の理性の力だけを頼りにして自己立法ができるのだ、ということをどうしても主張したいわけなんだ。まあ、うまく行っているとは思えないけどね。

Ⅲ 「自己立法」と理性による拘束(p125-)

自己立法というのは、わたしが何かに自分をコミットさせるということだ。たとえば、「人を殺さない」とか「ダイエットします」とか。「コミット」というのは、まあ、「約束する」くらいの意味で捉えておいてくれたまえ。「拘束する」とかの方が近いんだけどね。

Ⅳ 社会によって媒介された実践的アイデンティティ(p139-)

私が何かにコミットするためには、私は「誰か」でなくてはならない。

たとえば、「締め切りまでにちゃんと原稿を仕上げます」というコミットができるのは、締め切り前の漫画家だったり、小説家だったりするわけだ。

あるいは、「ダイエットしてきれいになって、ぜったい彼を振り向かせてみせるんだから!」とか昔の漫画みたいな台詞でコミットするためには、その人は女性でないとならない(いろんなパターンがるので一概には言えないけれど)。

で、そういう「私は誰か」というアイデンティティは、社会の中で得られるものだ。ひとりで部屋に引きこもって「俺は漫画家、俺は漫画家…」とつぶやいていても漫画家にはなれない。だから、社会から切り離された人は何者でもないのであって、何者でもないということは何かにコミットすることもできないのだ。

Ⅴ 社会的・歴史的な「自己立法」の原理(p147-)

自己立法というのは書斎に引きこもった人が演繹的に導き出すものではない。そうではなくて、社会のなかで歴史的に行われていくものだ。

本章で私がやろうとしたのは、カントみたいに個人ベースで自己立法を考えようとしてもうまくいかないというのを示すことだったのだよ。

コメント

かなり端折って要約しました。Ⅲ節に出てくる意志の弱さがどうたらの議論は、この章の中でどういう風に位置づけられるのかよくわかんなかったので省略した(ようするに、カントの議論だとコミットというのをうまく説明できないという流れでの話だと思うんだけど…)。