2023-01-01から1年間の記事一覧

【雑文】ブログでなくてもいいのかも

私がブログを書くのは、別に人とコミュニケーションしたいからでもないし、人々を啓蒙しようというのでもないし、承認欲求を満たしたいからというのでもない。ただ、読書ノートに使っているだけだ。 読書ノートが欲しいのならコクヨがお勧めですよ、と言うこ…

【読書ノート】『地球と存在の哲学』第2章

地球と存在の哲学―環境倫理を越えて (ちくま新書)作者:オギュスタン ベルク筑摩書房Amazon 第2章 母型の郷愁 1 近代性の拒否 西洋にとっては、近代というのは時間的な現象だ。つまり、それまでは前近代だったけど、ある時点から近代に移行したのだ、という…

【読書ノート】『地球と存在の哲学』序論、第1章

地球と存在の哲学―環境倫理を越えて (ちくま新書)作者:オギュスタン ベルク筑摩書房Amazon ベルクはもう読まない! というつもりでいたけれど、やっぱりもうちょっと読まないとなあという気持ちになった。 風土論によって気候変動みたいな環境問題が解決され…

【読書ノート】『グリーン経済学』22章~ラスト

グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon 22 グリーンプラネット 気候変動みたいなグローバルな外部性の解決に取り組むには、主要国の協調行動が不可欠だ。だ…

【読書ノート】『グリーン経済学』19章~21章

グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon 19 グリーン世界における個人の倫理 アダム・スミスのいう「見えざる手」がうまく働いていれば、私たち一般市民は倫…

【読書ノート】『グリーン経済学』14章~18章

グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon 14章 グリーン政治の実践 経済発展は環境に影響を与えるようだ。クズネッツ曲線というのがある。これは、経済発展の…

【読書ノート】『グリーン経済学』10章~13章

グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon 10章 エクソ文明の魅力 地球の環境がメチャクチャになっても、よその惑星に移住すればいいじゃないか、と考える人は…

【読書ノート】『グリーン経済学』8章~9章

グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon 8 グリーン経済学と持続可能性の概念 主流派経済学(新古典派経済学)による環境問題への考え方はこういうものだ。ま…

【読書ノート】『グリーン経済学』1章~7章

グリーン経済学――つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考作者:ウィリアム・ノードハウスみすず書房Amazon ノードハウスの本は『気候カジノ』につづいて2冊目。 評判がいいので読み始めてみて、今のところ18章まで読み終わっ…

【研究ノート】環境配慮行動関連の論文あれこれ

環境配慮行動関連の論文はどれも似たり寄ったりでつまんない、と思ってたからあまり読んでなかったけれど、改めて調べてみるとこの10年くらいで新しい展開を見せているみたいだ。最近勉強し直している風土論とも絡んできそうな気もするので、面白かった論文…

【読書ノート】『風土学はなぜ何のために』5章~ラスト

風土学はなぜ 何のために作者:オギュスタン・ベルク関西大学出版部Amazon 第五章 風土学の二つの時代 やがて私(ベルク)は地理学から存在論の方に興味が移っていった。和辻が言うように、風土とは「人間存在の構造契機」なのであり、風土について論じていく…

【読書ノート】『風土学はなぜ何のために』4章

風土学はなぜ 何のために作者:オギュスタン・ベルク関西大学出版部Amazon 第四章 通態化 デカルトは、「我思う、ゆえに我あり」と言ったとか言わなかったとか。いや、言ったのだ。言わなかったにしても、『方法序説』には確かにそう書いてある。 我思う、ゆ…

【読書ノート】『風土学はなぜ何のために』3章

風土学はなぜ 何のために作者:オギュスタン・ベルク関西大学出版部Amazon 第3章 風土性 わたし(ベルク)は昔、和辻哲郎の『風土』という本が何を言わんとしているのか、よくわからなかった。とくにわからなかったのは次のようなくだりだ。 この書のめざすと…

【研究ノート】計画的行動理論の批判的検討2

前に書いた記事の後日談的なものを書いておく。 odmy.hatenablog.com 調べてみたら、計画的行動理論って海外ではかなりボコボコに批判されてるみたい。今から10年近く前に、「計画的行動理論はそろそろ引退した方がいいよ(Time to retire the theory of pla…

【読書ノート】『風土学はなぜ何のために』1~2章

風土学はなぜ 何のために作者:オギュスタン・ベルク関西大学出版部Amazon 何年か前に読んだ本の再読。 断続的だけどベルクの風土論はずっと勉強し続けていて、もう20年近くになる。でも、いまだによくわかった気がしていない。 たぶん、環境問題を解決する上…

【研究ノート】風土論の使い道

前回もちょろっと風土論の使い道について書いてみたけれど、もうちょいと考えてみたい。 使い道1:地域づくり 地域づくり系の文献を読んでいると、地域づくりをするにはまず地域のことを知ることだ、と言う話がよく出てくる。それで、住民たちで町歩きをした…

【用語集】風土論

風土論というのがあって、学生時代から勉強してきているのだけど、いまだにうまく理解できている感じがしない。数千字でまとめられるものではないけれど、なんとかエッセンスだけでもまとめてみよう。 ザックリ言うと、風土論とは人間と環境の関係性を現象学…

【研究ノート】仏教的自然観にもとづく環境心理学の構想

環境意識に関する調査をすることになって、具体的に何しようかあれこれ考えているのだけど、うまくまとまらない。最終的には、新しい環境教育のあり方を提案するというところまでつなげる予定で、その準備作業としての調査という位置づけだ。 それで環境心理…

【用語集】機能とケイパビリティ

「不便益」という考え方がある。「不・便益」ではなく、「不便・益」。つまり、不便であることは、悪いことばかりではなく逆に良い面もあるのではないかということだ。 ごめんなさい、もしあなたがちょっとでも行き詰まりを感じているなら、不便をとり入れて…

【用語集】先験主義と実現ベースの比較

「気候変動問題を解決するには資本主義を捨てなければならない」と主張する本が何十万部も売れている。もちろん他の経済学者からは厳しい批判が出た。しかし、そうした批判の声はあまりに地味なせいか、人々の耳にはほとんど届いていないみたいだ(以下の柿…

【用語集】社会契約説

社会契約説とは? 正義は、誰もが納得できるものでなければならない。たとえばプーチンは自分の正義を信じてウクライナに攻め込んだのだろうけれど、その正義は多くの人々にとって理解不能なものだ。あるいはジャイアンは「お前の物は俺の物、俺の物は俺の物…

【雑文】用語集の今後の予定

思いつきで始めた用語集だけど、なかなか良い感じだ。功利主義とか義務論とかも、なんとなくわかってるつもりだけど改めて説明しようとするとなかなか難しい。こうして整理しておけば、忙しいときでもさっと使い回せて便利だろう。 あと、できれば具体例も追…

【用語集】義務論

義務論では、義務に従うことが倫理的に善いことだとされている。そんなの当たり前だと思うだろうか? まあ、そうだ。でも、一見当たり前なこの主張を裏付けるカントの推論は割とアクロバティックでそれなりに興味深いものなので、もう少し詳しく見てみる価値…

【用語集】功利主義

津波てんでんこと功利主義 「津波てんでんこ」という言葉がある。津波が来たら、周りの人を助けようとせずに、自分だけで逃げろという意味だ。 過去に津波に襲われた経験のある地域では、おそらく、家族や友人を助けようとして自分も津波に飲まれてしまった…

【用語集】SDGs、MDGs

SDGsに対する人々の関心は? 2023年現在、「SDGs」という言葉はまだちらほら耳にする。もしかしたらみんなもう飽きて使わなくなってるんじゃないかなあ、とも思う。わたしはテレビを観ないし人ともあまりしゃべらないので世間の常識がよくわかってない。でも…

【雑文】用語集をつくろうか

就職が決まりそうな感じだ。「決まった」とはまだはっきり言われてないけれど、決まったような雰囲気で相手方と話を進めている。大学の人事は奇々怪々だから完全に安心しきることはできないけれど、決まったものと見なして準備を進めた方がいい気がする。授…

【研究ノート】計画的行動理論の批判的検討

人はなぜ環境保全行動をするのだろう。マイバッグを使う、クーラーの温度を控えめにする、電気をこまめに消す。こうした行動を人はなぜ取るのか。 環境保全行動の規定要因を明らかにすることで、どうすれば環境保全行動を促せるかが見えやすくなる。たとえば…

身体に根付いた「善いこと」

人が何か善いことをするときの心のありようについて考えてみたい。 気候変動を緩和するために、個々人がなるべく化石燃料への依存を減らした生活を送るのは「善いこと」だと思われている。でも実際には、多くの人はそんなこと気にせずに生活しているだろう。…

理想を唱えるのは楽しいけれど

環境倫理について私がここ数日書いてきたことは、自分でもただの理想論のように思える。 社会のなかに遊びがあればいい。それはそうだろう。商店街が無くなればいいなんて考えている人はあまりいないはずだ。ただ、しょうがない、それが時代なのだと、みんな…

環境倫理は遊びを目指すべき

社会に遊びが残っていてほしいと思う。経済的に価値がないものでも、非効率なものであっても、なぜか淘汰されずに残っているものがなるべくたくさんあるといい。私にとっての環境倫理とはそのようなものだ。 一般論としていえば、その人にとってかけがえのな…