英文ノート2023-07-25

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To be one of a crowd wandering around in search of a place to settle down, with your existence distilled down to a handful of mementoes and a cactus, is profoundly depressing.

落ち着いて仕事ができる場所を求めてさまよう同僚たちの群れに混ざり、わたしという存在はわずかな形見の品とサボテンに蒸留されてしまうのだ。まったく気が滅入る。

英文日記はためになるけど毎日やるのはおっくうなので、もっとハードルの低いためになることをやってみる。これでもつづかないかもしれないけれど、とりあえず「毎日やる」と宣言する。宣言を破ってもペナルティはない。わたしの心が痛むだけだ。そして、痛みを忘れるテクニックをわたしはたくさん持っている。だめだあ。

『実例が語る前置詞』という本を昨日から読み始めた。英語学習関連の本だと、今年のマイベストの予感が今からしている。

この本によると、どんなに英語の文法書を勉強してもネイティブじゃないとぜったい出てこないような言い回しはあるものであって、そういうのを覚えないといつまで経っても不自然な英文を書き続けることになってしまう。だから、「こんなの日本人には絶対思いつけないよ」というような言い回しを文脈込みで覚えてしまおう、ということになる。

前に松本亨の『英作全集』というのにチャレンジしたけれど、3ヶ月毎日やってもほとんど効果が見られないのでやめてしまった。あの本はいろいろ問題があるけど、文脈なしにとつぜん日本語文を示して「これを英語にしろ」というつくりになっているところが特に良くないのではないだろうか。どういう文脈での発言かわからないので、しかたなく文法知識をあれこれ駆使して文をつくってみるしかなかった。「文脈込みで覚えろ」というさっき紹介した本の原則からは完全に外れている。

さて、今回の英文はこれだけ見せられても何のことやらさっぱりだ。これは、今の時代の職場についていけない老人の嘆きを通して、職場で行われているいろんな試みを皮肉るような記事からの抜粋だ。この文の少し前のところで、従業員の「心理的安全」を守るためにみんな黙って仕事をしていて、発言するときは木製のヒョウタンを持ち上げてみせなければならない、というへんなルールがあるオフィスのエピソードが書かれている(たぶんフィクション)。今回の英文で出てくる「サボテン」は、たぶんこのヒョウタンのことを指してるんだと思う(サボテンとヒョウタンはちがうんだけど、老人だからそんな細かいちがいよくわかんないよ、みたいなことだと思う)。

で、なんでヒョウタンとかを持ってうろうろしているかというと、これはホットデスキングという仕組みを会社が取り入れたから。自分用のデスクを廃止して、共有の大きなデスクでめいめいが毎日好きな場所に座って仕事しようというもの。そういう洒落臭い仕組みについていけない老人は、「サボテン(ヒョウタン)」と、「形見の品」を持ってうろうろするはめになる。「形見の品」というのは、たぶん仕事道具じゃないだろうか。タブレットとかノートPCとか。なんでそれが「形見の品」なのかというと、この人は自分用のデスクを奪われて、アイデンティティをなくしてしまっているから。私はもういない。私の痕跡をとどめているのはこのタブレットだけだ。みたいなことだろう。

ダメだ。文脈を書いただけで、結構文字数食ってしまった。こんなのではつづかない。本当は、“with your existence distilled down to a handful of mementoes and a cactus” というところでdown toを使う言い回しはあんまり日本人には思いつかないよねーという話をしたいのだった。英辞郎で調べてもdistill down toという熟語はない。でも、たぶん「こんなみじめな存在に成り果てた」というニュアンスでdown toを使ってるんじゃないだろうか。ああ、もうつづかない予感がしてる。