【読書ノート】『グリーン経済学』14章~18章

14章 グリーン政治の実践

 経済発展は環境に影響を与えるようだ。クズネッツ曲線というのがある。これは、経済発展の初期段階では環境汚染が増加するけれど、だんだん所得が高くなってサービス産業が重要になってくると、環境汚染が減少するという仮説だ。

 実際、炭素強度に関してはこの仮説は成り立つ。でも、炭素強度ではなく二酸化炭素の総排出量をとると成り立たなくなる1

 では、民主主義は環境に影響を与えるだろうか? PM2.5に関して言うと、完全な民主守護国家は完全な専制主義国家よりも汚染度が45%低いというデータがある。ただし、この手の民主主義と環境の関係を実証する研究は他にあまりない。

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 章の後半では関税とか気候変動対策とかの話が出てくるのだけど、グリーン政治の話とあまり関係ないように思ったのではしょった。前に出てきたコロナの章のときも思ったけど、この本、構成があまりよくない。書き方がダラダラしてて、結局何を言いたいのかわからない、というところがある。

15 グリーンニューディール

(「グリーンニューディール」という言葉を出してる割には、内容は単に現在のアメリカの環境政策についてあれこれ批判してるだけ。これまでも出てきたような議論なので省略)

16 グリーン経済の利益

(適切な炭素価格を設定すれば企業は二酸化炭素を出さないようにイノベーションをしたりするだろう、などのこれまで何度も出てきた話。省略)

17 グリーン税

 課税によって歪みが生じることがある。もっとも歪みが生じやすいのは資本に対する課税だ。たとえば、法人税が高いと、不動産投資が増え、製造業に対する投資が減るので、住宅が増える一方で工場が減ってしまう。逆に、労働所得に対する課税は歪みが少ない。税金が高いからといって、外国で働こうという気持ちにはなかなかならないものだ。

 では、環境税はどれくらい歪みをもたらすのだろうか? 実は、環境税はむしろ逆に、歪みをなくすものだ。環境税によって環境被害が減少すれば、経済効率が高まるのだ。

 環境税が期待できる分野は、外部性が充分に測定されていて、製造プロセスのなかに課税しやすいポイントがあり、収入に比べて管理費の小さな分野だ。たとえば温室効果ガスの排出、ガソリンなどの燃料だ。

 環境税の中でもっとも重要なのが炭素税だ。なぜなら、課税ベース(課税対象となる活動の価値)が大きいからだ。しかし実際のところ、ほとんどの国において炭素税の税収はゼロだ。

 大気汚染に関しては、アメリカでは排出許可を供与している。ところが、二酸化硫黄の取引価格は限界損害の10分の1に過ぎない。安すぎるのだ。

 アメリカの現行のグリーン税は、連邦政府歳出の4%しか占めていない。しかし、適切な額を課税するなら、これは24%にまで増やせるはずだ。たとえば炭素税による税収は現在ゼロだが、将来的には1,590億ドルまで増やせる。自動車燃料も、現在の800億ドルから3,700億ドルまで増やせる。

 環境税を確立するためには厳しい戦いに勝たなければならない。敵は課税反対派の集団や、近視眼的なものの見方しかできない人々だ。

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 環境税はまだまだ確立されてませんという状況報告の章。課税による歪みの話って必要だった?

18 グリーンイノベーションの二重の外部性

 現在われわれが直面するグリーン問題に対処するには、重大な技術革新が必要だ。グリーンイノベーションには二重の外部性がある。

  1. 環境に配慮した製品の価格が、本来の価値を反映していない。
  2. イノベーションに対して個人が受け取る報酬が、公的な利益を下回る。

 2について説明しよう。

 新しい技術には非競合性がある。つまり、Aという企業がその技術を使ったからといって、Bという企業がその技術を使える分量が減るということはない。また、新しい技術には排除不可能性がある。つまり、技術が開発され、公開されたら、他の企業がその技術を真似するのを止めることができない。

 産業革命のころ、イギリスが機械技術の輸出を制限しようとしたことがある。紡績職人がイギリスを離れるのを禁じたり、結構無茶をやったのだけど、意味なかった。結局は技術は外国に流出したのだ。

 これが、さっきの2の外部性だ。つまり、イノベーションには外部性があるということだ(もっとも、それは正の外部性だけど)。そのため、イノベーションを発明した個人に対する報酬が、社会的利益を大きく下回ってしまう。イノベーションの社会的収益率と私的収益率を比較した研究があるけど、私的収益率は社会的収益率の半分くらいしかないという。そして、これはさっきの2の外部性しか考慮していない数字だということに注意してほしい。1の外部性も考慮したら、社会的収益率と私的収益率の差はさらに拡大する。こうしたわけで、イノベーションが起こりにくくなるのだ。

 2の外部性がとくに大きくなるのは基礎研究だ。というのは、基礎研究だと通常、特許が取れないからだ。一方、基礎研究の対局に位置する製造は、100%近く専有可能だ。

 政府が外部性に価格をつければ、1の外部性はとりあえず補正できる。2の外部性が残ってしまうのはしかたないけど、とりあえず1の外部性をどうにかするだけでもイノベーション促進につながるだろう。

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 イノベーションの外部性という表現は初めて見た。なるほど。でも、そのイノベーションの外部性をどうやって解消するかという話がなくて、結局は1の外部性の内部化(環境汚染とかにちゃんと価格をつけよう)の話になってしまうのは少しがっかり。だったらなんでわざわざ2の外部性の話をしたの? と言いたくなってしまう。

 というわけで、この本はやっぱり構成がよくない。でも、一応最後までまとめていこう。次の章は私の得意な倫理の話だし。


  1. 当たり前だ。