【雑感】英語ができるといろいろ節約できる

はじめに

  • 自分はなんで英語の勉強をするのだろう? というのを時々再確認しないと、だんだんかったるくなってくる。もう、日本語でも生きられるんだし、日本語でいいじゃん、とか。
  • だから動機付けのために自分用の餌を置いておこうと思う。餌のタイプはいろいろあるけれど、今回は「節約」しばりで考えてみた。
  • あと、ここでいう英語の勉強というのは、あくまで読み書きのこと。リスニング・スピーキングのことは興味無いので知らん。

書籍代を節約できる

  • 同じ本で、英語版と日本語版の2つがあるとしたら、英語版を買った方が安上がりというケースは多い。
  • たとえば、村上春樹1Q84を日本語の文庫本で買おうとしたら、セットで6,000円以上する。Kindle版でも4,000円くらいする。だけど英訳版だとKindle版で1,300円だ。

  • 何でなのかよくわからん。たぶん、日本の古い出版流通の仕組みがアレしてるとかそんなことじゃないかと思う(この場合、日本語の本を英語に翻訳しているのだから、翻訳者に入る印税を考慮したら英訳版の方が高くなるはずなんだけど、実際は逆に日本語版の方が圧倒的に高い)。
  • ピンカーの『21世紀の啓蒙』は、日本語訳だと上下巻で計5,000円以上。一方、原著のEnlightenment Nowは1,500円。別にこういうのだけ取り出してるんじゃなくて、全般的にこんな感じだと思う1
  • あと、洋書はKindle化してるものが非常に多いので、買っても部屋のスペースを食わないという意味でも節約的だ。日本語の訳書の場合、Kindle化してなくて、あっという間に紙の本が絶版になり、マーケットプレイスで高騰してしまうということもある。ヒースの『ルールに従う』とか、すごく良い本なのに今は中古本で12,000円以上出さないと買えない。もー。日本の学術書って、なんのこだわりがあるのかしらんけどさっさとKindle化しろよ、むしろ紙の本とかいらない、って思うけど、この状況はなかなか変わらない。で、日本の学術はますます衰退していくのだろうなあ、とぼやいている時間も洋書で読めば節約できる。

情報収集にかける時間を節約できる

  • コロナにせよ、ウクライナのあれこれにせよ、日本語で情報収集しようとすると結構たいへんだ。そもそも信頼できるメディアがあんまり無いから、テレビや新聞で情報収集しようとするとファクトチェックで二度手間になる。SNSなんかはもっと危険で、手ぶらで行くと、陰謀論じみたへんなことを言う人にだまされたりもする。
  • 専門家が書いた本に目を通せばいいのだけど、そもそもその分野で誰が専門家なのかというのも最初はよくわからない。特にコロナの場合、問題が感染症分野だけでなくて経済分野とかにも関わってくる。関連する専門家を特定して、さらにそういう人たちの本を買って読むとなると、時間もお金もかかる。また、自称専門家であっても、実はもう20年間くらい査読論文を1本も書いてない呑気オヤジだったりするので、「あんた専門家じゃないじゃん」というファクトチェックにもまた時間がかかる。
  • 海外メディアもへんなのが多いみたいだけど、良いのもある。個人的にはThe EconomistBBCニュースがかなり安定感があって好き。Economistの方は一応経済誌なんだけど、日本の経済誌みたいに株価が上がればなんでもいいのじゃ、みたいな昭和のオヤジ感がなくて、環境とか貧困とか格差とか科学とか歴史とか文学とか、とにかく多様な視点からバランス良く現在何が起こっているのかを描いてくれる。ユーモアもあって楽しい。ちゃんといろんな学者にインタビューして裏付けをとったり、独自にデータ分析したりもしていて、ちょっとした論文を読んでいるような充実感がある。有料だけど、日本の新聞とるよりはEconomist購読した方が、時間節約という点では良いと思う。
  • あと、ここは研究者(とくに社会科学系)限定だけど、日本語論文を読むよりも英語論文を読んだ方が手っ取り早い、というケースが結構ある気がする。自分の研究テーマに関する日本語論文を探していってもちょうどいいのが全然無くて、でも英語で探すと膨大に見つかるとか。個人的には、エシカル消費で日本語論文を探してもぜんぜん良いのが見つからなかったのが、英語で探すと90年代くらいから現在にかけて膨大な量の研究蓄積があるのを発見したりした。もちろん研究テーマによると思うけど、日本語でちょっと探して見つからなかったら、さっさと見切りをつけて英語で探す方が時間の節約だと思う。

英語教材にかけるお金と時間を節約できる

  • そんなの当たり前じゃん、って感じだけど、ここで言いたいのは、英語教材に依存してしまう弱い心を捨てることができるということ。
  • 大型書店に行くと、英語教材関連の本で結構なスペースの棚が埋め尽くされているのに気づく。TOEIC向けの本とか、英語学習のインフルエンサーみたいな人が書いたありがたい本とか。
  • たしかに、文法がぜんぜんわからないとか、発音記号の読み方がわからないとか、そういうレベルの人にはそういう本も必要なのかもしれない。だけど、高校の教科書レベルの英語を学習した人は、独学でどんどん勉強を進めて問題ないと思う。今の自分の英語理解を顧みても、結局は高校で学んだことの延長で、覚えた単語の量と読んだ英文の量が増えてるだけだと思う。
  • もちろん、良い英語教材もあるとは思う。だけど、そういうのを買わなくてもなんとかなる。あとは誘惑を断ち切る強い心があるかどうかだ。そのためには、ともかく読みたい英文をどんどん読んでしまって、「インフルエンサーが何を言おうと知ったこっちゃない。俺は読めてる」という自信をつけた方が良い。ある意味、インフルエンサーに対するワクチンみたいなものだ。

おわり

  • で、今のところの自分の英語力は、BBCニュースをつっかえながら読んだり、Economistで自分の興味あるテーマの記事を数回辞書を引けば読んだりできる程度のレベル。洋書は、すっきりした書き方だと苦労せずに読めるけど、なんか文学的レトリックが多い本になるとキレて床に投げつけたりする。
  • でも、これまで床に投げつけた本の中にも良いのはあると思うので、そういうのも読めるようになったらいいのになあ、と思う。放置本を楽しんで読めるようになるのも大事な節約だ。

  1. (2022/06/14追記)洋書の場合、需給バランスがそのまま価格に反映されやすいということなのかなあ。確かに売れてる本だとめちゃくちゃ安いのだけど、売れない学術書なんかだと普通に1万超すこともあるし。で、ハードカバーとKindleとでの価格差も気になる。このThe Oxford Handbook of Environmental Ethicsの場合、ハードカバーだと2万7,000円もするのに、Kindle版だと4,000円ちょっとしかしない。普通に考えたら、電子書籍にすれば紙代も印刷代もいらないので安くなりそうなんだけど、日本の書籍の場合なぜかそうならない。つまり、洋書は純粋に市場競争において価格が決まるのだけれど、日本国内の書籍の場合、市場外の要因によって価格がだいたい決まってしまうということじゃないだろうか。じゃあ、その市場外の要因ってなんなんだい、というのは勉強してないのでわかりません。