論文書きたくないから逃避的に重い腰の上げ方を考えてみた

論文を書きたくない

論文を書かないとならないのだけど、ぜんぜん書く気になれなくて愚図愚図してる。このままだとなかなかヘビーなことになりそうなので、対策を考えてみる。

論文を書いたらこんないいことがある

  • まずは餌を並べてみよう。

    • 業績が増える → 就職に有利。科研費審査でも有利になるかも。
    • 自分の考えが形になる → 共同研究者の協力を得やすくなる。
    • 自分の考えの限界がわかる → 次の研究につながる。
  • でも、正直あまり魅力的な餌ではない。お酒でも飲んでる方が楽しいよう。

  • まず、自分が論文を書くことの何が嫌なのか明確にして、それから対策を考えよう。

論文を書くことのこういうところが嫌だ。

好き放題書けない

  • ブログ記事ならいくらでも書ける。誰も読まない記事を毎日5,000字前後平気で書いてる。

  • なんでかというと、ブログ記事は基準が緩いから。つまり、わかんないところは「わかんない」で済ませればいいし、データがあやふやなところは「誰か調べてくれればいいのになあ」と舐めたことをほざいていればいい。ときどき衝動的に「ファック!」とか書いても怒られない。

  • でも、論文だとそういうわけにはいかない。「ファック!」とか書いたら一発でリジェクトされる。ブログとちがって、論文は好き放題書けないのだ。その爽快感の無さのせいで、論文は「かったるい」と感じてしまうわけなのだよね。

怒られることばかり心配してる

  • 文献調査が甘いとか、分析が不適切とか、査読者に怒られることを心配してビクビクしている。査読者だけじゃなくて、共同研究者からも首をひねられるんじゃないかとひとりで不安になってる。

  • 怒られる前に怒られる心配をするからこそ、きちんとしたものが書けるというのはあると思う(心配しなさすぎで怒られてばかりの人をわたしは知ってる)。だけど、怒られるの嫌だからいっそ書かない、という発想になっている気がする。

流れを考えるのがたいへん

  • 論文を書くハードルに、そもそもどういう流れで書けばいいかが見えてこない、というのがある。ダラダラ文章を書くことはできるけれど、どうしてもきれいなストーリーにならない。読み返すとがっかりするので、せっかく書いたものを消してしまったりもする。

  • せっかく書いてもどうせ消しちゃうしなあ…と考えると、なかなか重い腰が上がらなくなる。

重い腰を上げるための方法

「これは趣味だ」法

  • これは「好き放題書けない」「怒られることばかり心配している」への対策。

  • 論文ではなく趣味としてブログ記事を書いているのだ、というつもりで書く。具体的には、整合性とか裏付けとか無視して、とにかく最後まで書き切る。論文1本の文字数がだいたい1万~1万5,000字程度だとしたら、ブログ記事のノリなら2日あれば書ける。で、それから読み直して突っ込みどころを特定していって、少しずつ修正を加えていく。

  • 漫画家の田島列島氏はなかなか次回作を描き出せないときに「これは趣味だ」と自分に言い聞かせながら2ヶ月引きこもってネームを描いていたという。そこからヒントを得た、というか丸パクリしたのがこの「これは趣味だ」法。他にもいろいろ使い道はあると思う1

ひとりYouTuber法

  • これは「流れを考えるのがたいへん」への対策。

  • 論文というのは、突き詰めれば「面白い考えを人に伝えるための手段」だ。だから、本質的にはYouTubeと変わらない。ならば、論文執筆者がYouTuberから学べることもきっとあるはずだ。YouTuberの良いところとして、「要点をシンプルかつ面白く伝える技術の高さ」が挙げられるだろう2。そこを真似るのだ。

  • パソコンの前でYouTuberのふりして自分の研究を説明してみる。だいたい時間は15分くらい。そして、話の流れを振り返ってメモにまとめてみる(説明しながらメモしていってもいい)。それが論文のストーリーになるわけだ。

  • YouTuberの気持ちでしゃべっていると、最初自分が書こうとしていたことの大半はどうでもいいことだというのに気づく。こんなことしゃべったら視聴者が離れてしまうということばかりだ。「論文は細部に命が宿るのだッッ!!!」なんて知った風なこと叫んだって誰も聞いちゃいねえ。とにかくバサバサ枝葉を切ること。

  • 根性のある人は本当にYouTuberになっちゃっても構わないと思う。でも、そちらにのめり込んでしまうリスクもあるのでほどほどに。

ポモドーロ法(心が弱い人向けver.)

  • これは、上に挙げた「嫌だ」リストに直接対応した対策ではないけれど、腰が重いときにはいつも有効な方法だと思う。具体的にはこういう風にやる。

    • 30分書く → 15分仮眠取る → 30分書く → 15分仮眠取る…
  • ようするに、よくあるポモドーロ法という奴ですね。ちがうのは、休憩時間が長めであることと、休憩中の行動を仮眠一択にしているところ。

  • なぜ仮眠をとるかというと、「論文を書く」という嫌なことをして心が傷ついているから。毛布にくるまって心と体を休めなければならないのだ。休憩時間を長くしているのは、自分を甘やかしているから。SNSをのぞいたりするのは厳禁。確実にMPが削られる。

  • わたしよりさらに心の弱い人は、イチゴミルク味の飴でも口に含みながら自分を徹底的に甘やかすと良いと思います。あと、時間を計るのにはスマホアプリとかじゃなくて、砂時計を使った方がいい気がする。アプリだと時間切れの時にスマホがぶるぶる震えて「ひゃっ」となるので。

おわりに

あとは、「書かなければならない」という冷たい現実に直面してください。

2022/05/25追記

  • でも、なんだかんだで書いているとだんだん楽しくなってくるけどね…。分析がうまくいってなかったり、論理がうまく流れないところがあったりすると、そこで気が重くなって腰も重くなる、ということのよう。

  1. 人生においてなかなか踏ん切りがつかないタイミングで「これは趣味だ」と唱えることは気持ちを楽にしてくれる。似たような考え方に大槻ケンヂの「人生社会科見学主義」というのもある。

  2. これは、ほとんどの大学教員が持ってない能力だ。オンライン授業で無理にYouTuberの真似をして盛大に滑っている人たちも大勢いると思う。そして単位の欲しい学生たちはそれをやさしくスルーしてくれるので、「俺もなかなかじゃないか!」という教員側の勘違いが強化されてしまう地獄のようなスパイラルが生じているとかいないとか。